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Issure #04

Cooking with Cacao


ホテルショコラのカカオ料理について

ホテルショコラは、世界トップレベルのチョコレートを作るために25年の歳月を費やしました。近年、この15年は最高級のカカオ料理を生み出すことに尽力しています。  ところでカカオ料理は、いつから始まったと思いますか?    実は、とても昔の話にさかのぼります。人間とカカオは3000年の歴史の中で、豊かに絡み合ってきました。カカオが甘いチョコレートのイメージを持ったのは、実はここ500年程の話です。それ以前の2500年間は、カカオは香ばしい風味を持つ材料として捉えられ、重宝されていました。また、それ自体が美味しく素晴らしい素材であることを、人々が認知していました。むしろ近年では、このカカオの真の魅力は知られておらず、過小評価されていると言っても良いでしょう。

私たちは、当初からホテルショコラを純粋なエスケープ(現実逃避)が出来る場にしたいと望んでいました。私たちのチョコレートが口の中で溶ける間、想像の中で、とてもラグジュアリーな場所に滞在しているような気分をお届けしたいと思っています。ホテルショコラを創業して最初の数年間、私たちはシグネチャーチョコレートを作ることに尽力していました。伝統的なチョコレートの世界観を覆す、新しいラグジュアリースタイルのチョコレートです。チョコレートの美味しさの魔法は、加えられた砂糖や乳脂肪分から生まれるものではなく、カカオから生まれるものです。ホテルショコラは当時も今も変わらず“More Cacao, Less Sweet”というコンセプトを掲げ、常にカカオファーストとしています。しかし、ここで誤解しないで頂きたいことは、甘いチョコレートが持つ、心地良く気分を溶かしてくれるようなあの特質を、他の誰よりも私自身は愛してやみませんし、実際その甘いチョコレートを中心に生活やビジネスを築いてきました。しかしスーパーフードとしてのカカオの忘れられた物語は、ここで語り直す価値があります。元々私たちは、多くの企業がそうであるように、ショコラティエの目線でカカオを見て、心地よく楽しいお菓子を作ってきましたし、そのことに今も情熱を注いでいます。そしてその情熱は、カカオ自体の、香ばしい風味を持つ食材としての側面も発見したことで、より一層強固なものになりました。

100年前、カカオ栽培と高級チョコレートの世界は完全に絡み合っていました。ところが現代では、その二者がほとんど切り離されていることに驚かされます。世界の中で、多くの生産者とプロデューサーは、それぞれが貢献した最終製品に関連付けられています。例えば、北海道の酪農家といえば、彼らが生産する素晴らしい牛乳やチーズを思い浮かべますが、偉大なカカオ農家はそのように認知されずに、報われていないことが多いのです。私たちホテルショコラは、このような関係性が多くの人たちにとって損ではないかと考えるようになりました。つまり、自分たちが食べるものの信頼性や品質を重視する人たちから、努力や技術が評価されないカカオ生産者まで、たくさんの人が、この関係性の断絶により何かを失っているのです。

そこでホテルショコラは 何を行なったのでしょうか?

私たちは、カリブ海にあるセントルシア島のカカオ農園、ラボエステートを購入し、カカオへの愛情を次のレベルに引き上げました。それは新たな冒険の始まりでした。私たちは、地球の裏側でカカオ農家になるという、非常に異例なステップを踏み出しました。カカオの栽培について学ぶほど、それは私たちの想像力を刺激し、ブランドの運命を変えていきました。まず私たちは、エシカルなカカオ農法のサステナブルモデルを実現しました。それからブティックホテルとレストランを建設し、カカオという素材の魅力を実際に体験できる機会を提供しました。ゲストをワクワクさせ、高品質な原料としてのカカオの重要性をアピールすることで、カカオに対する価値観を変えることができます。最高品質のワインに対してそのブドウ生産者が賛辞を受けるように、カカオの生産者も敬意を払われるべきであり、その実現を目指してカカオ料理のビジネスをスタートしたのです。

 

そこでは様々な実験が行われました。カカオを深く掘り下げていくうちに、カカオポッドのすべての部分を料理に使用できることが分かりました。廃棄する部位がありません。カカオ豆を囲む甘いライチのような果肉は、シャーベット、セビーチェ、カクテルに最適です。ローストしたカカオ豆は最も用途が広く、肉、魚、サラダや、パン、ケーキに深みのあるナッツのようなアクセントと、素晴らしい食感をもたらします。外側の莢(さや)は、土に戻る豊かな堆肥として使用されます。そしてこれらは、ホテルショコラが大切にしている「もったいない」というコンセプトに通じています。

当初から、私たちはカカオという素材に対して誠実に向き合いました。無理に料理に加え、仕掛けのようなものにすることは、決してしたくありませんでした。カカオは繊細に、しかし確実な役割を果たすことのできる食材で、目的を持って使うことができるのです。しかし、最初にメニューを見た時、私たちは行きすぎているのではないかと思い始めました。カカオ料理は目新しさを感じさせないか、「ただのチョコレートを使った料理?」と思われるのではないかと懸念しました。しかしゲストが私たちのカカオ料理を試してみると、光栄にも素晴らしいコメントとレビューを頂き、気掛かりとなっていた事はすべて消えていました。このことを考えるとき、それは驚くべきことでは無く、私たちが行ったことは、2500年前からカカオが私たちの食生活の中で果たしてきた役割を取り戻すことを、手助けしただけなのだということに気づかされます。そして今、世界中の多くの店舗でカカオ料理をお届けしています。世界中のゲストの皆さまから同じように好意的なコメントを頂いていることを、とても嬉しく思っています。ぜひ私たちの店舗でカカオ料理を楽しんでいただきたいと思いますが、お住いの場所によっては難しい方もいらっしゃると思います。

そこで、ご家庭でカカオを楽しんでいただける方法をお伝えします。まず、カカオニブを170度で10分〜15分程、ローストします。私は、イギリスにいる時、トーストにアボカドを潰したものとポーチドエッグを乗せ、その上にローストして砕いたカカオニブをトッピングして食べるのがとても好きでした。ここ日本では、豆腐の上に生姜やネギと一緒にカカオニブを加えて、カリカリとした食感のトッピングを楽しんでいます。 朝、ローストしたカカオニブをアボカドと卵の上で挽いている時、私はよく古代のマヤの戦士のことを思い浮かべます。彼らは一日中進軍し、カカオ豆の小さな袋だけを食べて戦うことができました。そのおかげで彼らも日々の戦いに勝っていたはずです。カカオは、1日を始めるのに最適な食材だと思います。 ホテルショコラは、カカオを本来の立場へ戻すことを使命としています。まだまだ長い道のりですが、私たちのカカオの旅を、皆さまと共有できることを楽しみにしています。    Welcome to our World of Cacao Cuisine. ようこそ、カカオ料理の世界へ。

ホテルショコラジャパン CEO・CO-FOUNDER