イギリスのバレンタインデーの歴史
イギリスでは、バレンタインデーは愛とロマンスがテーマになります。
長年付き合っているパートナーがいる人でも、ロマンス(恋愛)が始まりかけている人でも、バレンタインデーは、自分の特別な人への愛とリスペクト、そしてプレゼントを贈る絶好の機会となる一日です。
女性が男性にプレゼントを贈る日本とは異なりますが、イギリスでは男性が愛する人に特別なプレゼントを贈ることは、日本と同様にとても重要です。
イギリスのバレンタインデーの伝統とは?
日本と同じように、イギリスでも毎年2月14日にバレンタインデーを祝います。この日は、パートナーや配偶者に感謝の気持ちを伝える日でもありますし、また学生や未婚の人によくあるケースとして、秘かに思いを寄せる片思いの人へ、愛を伝える一度きりのチャンスの日でもあります。
実際にイギリスに住んでいる場合、クリスマスとニューイヤーが終わると、誰もがバレンタインを話題にします。人々はカードや花束、チョコレートやその他の贈り物に、市場規模として約2000億円を費やします。
この金額からも分かるように、恋をして幸せな人にとっても、またパートナーへの愛を示すための習慣としても、毎年のバレンタインデーは大きな関心事であり、多くのイギリス人がこのバレンタインデーに参加していることは明らかです。この状況はいきなり出てきた事ではありません。
1868年にイギリスの老舗ショコラティエ、キャドバリー社がハート型のボックスチョコレートを発売して以来、イギリスではバレンタインに贈り物をする事が習慣になりました。
一方この習慣により、 お付き合いをしている人やパートナーに、花束と高級チョコレート、そして心のこもったメッセージカードを贈る事は、ただの素敵なサプライズではありません。
バレンタインデーを待ち望む婚約者やパートナーから期待される日として、万が一贈り物を忘れてしまった男性は悲惨な思いをする事になります!
バレンタインデーをお祝いする理由は?
このバレンタインという日の名前は、有名な聖人ヴァレンティヌスに由来するとされていますが、彼が誰であったかについてはいくつかの説があります。
最も一般的に言われているのは、彼が西暦3世紀のローマ帝国時代の司祭であったというものです。その一説として次の話しが伝えられています。
時に、ローマ帝国時代の皇帝クラウディウス2世は結婚を禁止していました。理由は結婚をする男性は愛する人や家族を故郷に残す事で士気が下がり、良い兵士にならないと考えたからです。
これを司祭であるヴァレンティヌスは、不公平だと考え、規則を破り、兵士のために秘密裏に結婚式を執り行いました。その後、皇帝クラウディウスがその事態を知り、ヴァレンティヌスは牢屋に入れられました。
死刑を宣告されましたが、牢屋の中でヴァレンティヌスは看守の娘と恋に落ちます。そして2月14日に処刑されることになった時、彼は彼女に「あなたのヴァレンティヌスから」とサインをしたラブレターを送ったのでした。
この話しの最後が本当かどうかは不明ですが、バレンタインデーは非常に古い伝統であり、ルペルカリアと呼ばれる古代ローマの祭りに由来するとも考えられています。
これは2月の半ばに行われていた行事で、春の始まりを祝うものでした。お祝いの一環として、若い男たちは、桶の中に入った娘たちの名前が書かれた札を引き、その後パートナーとなり、祭りの間一緒にいることが定められたそうです。
そして時には結婚することもあったようです。それから年月が経ち、キリスト教会はこれを宗教的な祝祭に変えたいと考え、ヴァレンティヌス(=聖バレンタイン)を思い出すためにもこの行事を使用する事にしました。
それ以来、徐々に聖バレンタインの名前は、2月14日に愛する人への気持ちを表現するために使われるようになりました。
15世紀のフランスでは、2月14日はロマンティックな愛を祝う恒例の祝祭日となりました。この日を記念して、歌と踊りのある豪華な宴会が開催されました。そして現存する最古のバレンタインのメッセージを紙に書いたのは、15世紀のフランス人でした。1415年のアジャンクールの戦いでイギリスの捕虜となり、ロンドン塔に幽閉されていたオルレアン公爵は、最愛の妻に次のような手紙を書きました。
Je suis deja d’amour tanné Ma tres doulce Valentinée
これを大まかに訳すと、
「私はもう恋焦がれている、私のとても愛しいバレンタイン」
という意味になります。このメッセージは、現在も大英図書館のコレクションに残っています。
その他にも大英図書館には、英語で残された最古のバレンタインの手紙も所蔵されています。これは1477年のもので、マージョリー・ブルーズが婚約者のジョン・パストンに送ったものです。マージョリーはこの手紙の中で、ジョンを「正真正銘の愛すべきバレンタイン」と表現しています。
そしてイギリスでは、1601年頃までにバレンタインデーはイギリスの伝統の一部として定着していたようです。それは、イギリスを代表する劇作家、詩人として有名なウィリアム・シェイクスピアの戯曲「ハムレット」のセリフに、既にバレンタインにまつわるセリフが登場しています。
更に、1797年に『The Young Man’s Valentine Writer』という本が出版された事により、恋人同士の間でバレンタインメッセージを渡し合うことは、一般的な習慣になっていったようです。当時この本には、紳士が手書きのメッセージとして記すための感傷的な韻文や短い詩が含まれていました。
イギリスの郵便事情として、1635年からロイヤルメールポスタルが利用可能になっていましたが、1840年に非常に安価な「1ペニー郵便」が導入され、それ以降、より多くの人が利用するようになりバレンタインカードを送ることが普及していきました。また、それによりイギリス国内中の印刷業者は、今日まで続いているバレンタインカードの大量生産を始めました。
ここでイギリスの歴史を超えて語られている、バレンタインにまつわる迷信やエピソードをご紹介します。
- 未婚の女性が2月14日に最初に見た男性は、将来の夫になる人でしょう。
- 一人の女性に好意を持つ男性が集まり、自分の名前を書いて粘土の中に包む。その粘土を水の中に入れ、最初に水面に上がってきた名前の男性と結婚する。
- バレンタインデーに、女性がコマドリを見た場合、船員と結婚するでしょう。もしスズメを見た場合、貧しい人と結婚しますが、とても幸せ
になるでしょう。ゴールドフィンチ(ゴシキヒワ鳥)を見た場合、お金持ちの人と結婚するでしょう。 - ウェールズでは、木製の愛のスプーンが彫られ贈られていました。スプーンにはハート、鍵、鍵穴などの装飾が好まれ、この飾りには“あなたは私の心を解き放つ "という意味があります。
そしてここから、友情と愛を示す伝統としてのバレンタインが世界中に広がっていきます。
Happy Valentine’s Day everyone!
ハッピーバレンタインデー!
素敵な一日になりますように。