Engaged Ethics 

エンゲージド・エシックス

カカオ農園の生活を支え、持続可能なものにするための取り組み

私達は、カカオ栽培が永続できる環境を創出する事を目的に、エンゲージド・エシックスという造語をつくりました。カカオにおける他の「公正取引」と違うところは、資金援助だけではなく、実際に私達が同じ環境に関わり、リスクを共有することも含め、長期的な計画を実行しているところで、現在、顕著な成果が得られています。


2004年、ロンドンにショップをオープンした当初フェアトレードに加わる事を考えました。よく調べてみると、フェアトレードは万能なソリューションであり、あらゆる産業、地域や文化で通用する取り組みであることが分かりました。そして実際に多くの成果を上げていました。しかし、私たちホテルショコラ は独自の路線を歩もうと決意しました。なぜならば、私たちは、私たちのお客様が支援してくださる限り、自由であり、他に追随する必要はなく、自分たちが正しいと思ったことをやるべきだと考えたからです。

2005年、ガーナ(オスベン地域)を皮切りに、カカオ栽培を行う地域を視察し、課題を理解した上でつながりを持ちました。その後6年間に渡り、資金の援助と共に、課題に対して専門知識の提供を行い、カカオ農園と建設的な関係性を築いてきました。資金援助だけに依存する様な関係とならない仕組み作りを行いました。

代表的な例として、収穫量の低下による貧困のリスクを減らす為、カカオの苗木育種所のネットワークを作り、植え付けと収穫までの安定化を図ってきました。

現在も、定期的にガーナのオスベンを訪れ、私たちの友人であるカカオ栽培者へのサポートを続けていますが、カカオは国の管理を介して流通されている為、トレーサビリティ(生産から流通、廃棄段階)を全て把握する事は難しく、出来ることは限られています。

セントルシア島から始まったホテルショコラの冒険

2006年にセントルシア島に独自で土地を購入し、エンゲージド・エシックスの新たな展開につながる機会を得ました。所有した当初、土地は枯渇し、島全体でカカオへの関心は低い事が分かりました。

その理由について理解するのに時間はかかりませんでした。

前の所有者は、美しい140エーカーの土地をカカオよりも、人参を販売することで、より大きな収入を得ていました。

理由はいたってシンプルです。全てのカカオは一つの輸入業者を介してのみ取引が許可されています。 カカオ栽培者は倉庫にカカオを納めるまでが役割で、何の保証もなく、業者の判断によって売買されます。その価格は流通中間業者へのマージンが差し引かれ、支払いを受けるまでに6ヶ月も待たなくてはなりません。 この様な状況がセントルシアのカカオ栽培の低迷を招く結果となり、カカオの代わりに珍しいバナナが植えつけられていました。

私たちが購入した土地をカカオ農園として再生させるまでに実に2年の時を要しました。そして、カカオ再生の環境づくりをセントルシア全域にわたって着手し始めたのです。(ここで”私たち”という時には、フィル バックリーの存在は欠かすことができません。彼はこのセントルシアでの冒険を当初からリードしてきました。私たちがセントルシアに所有するホテルとレストラン「ラボ エステート」を訪問すれば、彼に出くわすことになるでしょう)。

エンゲージド・エシックス プログラムの提案

私たちは10を超えるカカオ農園との対話を通じて、島全体にわたってカカオ再興の道を推し進めてきました。エンゲージド・エシックス プログラムでは彼らに以下のような提案を行っています。

    • ・あなたが農園での収穫に自信を持って臨めるように、栽培した全てのカカオを購入する保証をします。

    • ・私たちはその対価を中間マージンの搾取なしに、そして、カカオ豆の品質を公正に反映したレートで直接お支払いします。
      ※2011年当時、セントルシアでは1kgあたり63 USドルで取引されていましたが、私たちが採用したレートは4.11 USドルで、これは収穫したての水分を多く含んだカカオ豆を、乾燥後の状態と同じレートで買い取ったことになります。 

    • ・品質向上のための無料テクニカルヘルプを提供し、ラボ エステートのココアリサーチセンターで繁殖に成功した最高品質のカカオ苗を一つあたり4ECドル(東カリブドル)で提供します。
      ※実際のコストは10ECドル(1ECドルは¥40相当)だったので、差額分は助成金として援助しました。 

  • ・プレミアム価格を支払うためには、完成した品質をとても高いレベルに維持する必要があります。 チョコレートメーカーとして、カカオの発酵や乾燥の工程がどのような影響を及ぼし、味に反映されるのかを知り尽くしているので、私たちはその工程を自分たち自身で請け負うことを好みます。


これらの私たちからの提案に対して、農園の人々は高い関心を示したものの、これまでカリブ海周辺で行われきた農業支援プログラムの失敗の歴史を通じて、彼らは「また調子の良い言葉だけで失敗に終わるのではないか」との疑念を拭えなかったようです。

「Ti Delcer農園」のローレンス オーガステ氏が島で最初の栽培パートナーとして、その第一歩を踏み出す前に、数ヶ月もの時を要したほどです。徐々に他の農園の方々もこのプログラムに参加するようになり、2011年には、立ち上げたばかりの農園から、歴史のあるカカオに返り咲いた農園まで含め、パートナーの数は120にも達しました。

カカオ栽培と大切なお客様との関係

私たちは持続可能なカカオ栽培のための計画を実行に移し、成果を上げてきたことに誇りを持っています。しかし同時に、彼らと公正な価格で取引をすることは、ホテルショコラ のチョコレートをお買い上げいただき、多くの支援をいただいているお客様の手に委ねられていることを忘れてはなりません。 

私たちが、もし直接的なお客様との接点を持たず、スーパーマーケットで大量にチョコレートを販売するようなメーカーであったなら、こうした取り組みには至らなかったでしょう。上質なチョコレートを楽しむお客様とカカオの栽培者は、近い関係でなくてはなりません。さもなければ、お客様の元に十分な情報が行き渡らず、また、カカオの栽培者も、品質への高いこだわりとそれを伝えていくという努力を怠ってしまうかもしれません。何よりもまずお客様の声に耳を傾け、その関係性を深く構築していくことが大切であるという企業理念を忘れずに、カカオの魅力をお伝えするブランドであり続けたいと考えています。